中国の胡錦濤国家主席が行った講演の詳細は次の通り。
▽中国の歩み
中国は悠久の歴史を有し、人類文明の進歩に大きな貢献をした。一方で苦難に満ちた道を歩んできた。特に1840年のアヘン戦争以降、封建統治の腐敗と列強の侵略によって、中国は艱難辛苦をなめ尽くしてきた。1911年の辛亥革命で専制君主制度を打ち倒し、49年に民族独立と人民の解放を実現した。
78年に改革開放の道を歩み始めた。高度な中央集権的な計画経済から活力に満ちた市場経済へ、閉鎖的状況から全方位の開放を実現した。中国は世界第3位の貿易大国になり、中国国民の生活も向上、歴史的変ぼうを遂げた。過去30年の発展は改革開放によるもので、将来の発展も改革開放に頼らなければならない。
▽中国の現状
中国は大きな発展を遂げたが、依然として世界最大の発展途上国だ。人口が多く、発展はアンバランスなため、矛盾や問題は規模でも複雑さでも世界でまれにみるものだ。裕福な社会の実現にはなお長い道のりがあり、根気よく努力を続けていかねばならない。
中国は終始変わることなく平和的発展の道を歩む。独立自主の平和外交を堅持し、世界経済の均衡のとれた発展を促進する。中国は防御的な国防政策を取り、永久に覇権を唱えない。
▽日中関係の歩み
近代に入り日本軍国主義が中国に対して侵略戦争を起こしたことで、両国の友好関係は大いに破壊された。この不幸な歴史は中華民族に多大な災難をもたらしただけでなく、日本国民にも大きな被害を与えた。われわれは歴史を銘記することを強調しているが、恨みを抱き続けるためのものではない。歴史をかがみとし未来に向かうためだ。平和を守るためであり、日中両国民が子々孫々にわたって友好的に付き合い、世界各国人民が平和を享受するためのものだ。
72年に国交正常化を達成し、日中関係は各分野で大きな発展を成し遂げた。両国間の貿易額は国交正常化当時の11億ドルから2360億ドルに増えた。日中関係の改善と発展は双方に実利をもたらした。
現在のような日中友好を築くのは容易なことではなく、大切にすべきだ。日中関係はさらなる発展のチャンスに恵まれている。経済のグローバル化が深まる中、日中の共同利益と協力の可能性は絶えず拡大しており、国際社会で担うべき責任は重くなっている。
▽日中関係の発展観
日中の戦略的互恵関係を切り開いていくため5つのことが必要だ。
まず、相互信頼の増進。日中は相手の発展を客観的に認識し、互いの平和的発展を支持すべきだ。相手は協力のパートナーであり、ライバルとみるべきではない。相手の発展を脅威でなく、チャンスとみなすべきだ。対話と協議を通じて意見の相違を克服すべきだ。
第2に、互恵協力の深化。両国は(現在の)良好な貿易の枠組みを大切にすべきだ。経済の相互補完性を生かし、省エネルギー、金融、情報など重要な分野での協力を強化していくべきだ。
第3に、人的、文化的な交流の拡大。人的交流は相互理解を深める懸け橋で、文化交流は双方の感情をつなぐきずなだ。根気よく継続し、青少年交流の長期的メカニズムの構築を推進すべきだ。
第4は、アジアの発展促進。アジアの発展は日中の協力なしでは語れない。さまざまな地域協力を推進し、東アジアの平和と安定を守る。東アジア共同体の建設を推進し、アジアの振興を促進する中で、日中の共同発展を実現したい。
第5に、グローバルな課題への対処。テロ、気候変動、エネルギーや食の安全、自然災害、感染症、大量破壊兵器の拡散などの問題で協力して対処していくべきだ。
▽日本に対する認識
中国の近代化建設において、日本政府は円借款を提供、中国のインフラ建設、環境保護、エネルギー開発などを支援して積極的な役割を果たした。日本各界はさまざまな形で中国を支援してくれた。大勢の日本人が日中友好のために心血を注いだことを中国国民は永遠に銘記している。
日本の国民は創造力にたけており、勤勉で英知と向上心に富んでいる。明治維新以降、世界の先進的文明を吸収し、アジアで最初の近代国家に発展させた。限られた資源と国土の中で、世界の注目を集める発展を成し遂げた。製造業、情報、金融などの分野で世界をリードし、世界一流の省エネ・環境保護技術を有している。これは日本国民の誇りであり、中国国民が学ぶべきものだ。
84年に中国は3000人の日本の青年を招き、大交流を行った。私はすべての交流活動に参加する中で深い友情を結んだ。昨年6月も当時の活動に参加した人たちを中国に招いた。共に努力して日中友好の種を広くまき、友好の旗印を子々孫々に伝えていかなければならない。
中国政府は(青年交流のため)100人の早大生を中国に招くことを決めた。
(8月に)北京五輪が開かれる。中国国民は五輪成功を願っている。日本政府と各界による五輪への支援に感謝する。日本選手が健闘することを祈る。
両国民が手を取り合って日中関係の美しい未来と、世界のより美しい未来をつくり上げていくことを願っている。(共同)
(共同通信社)
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